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PMDA 医療機関報告Best Practice|
特別対談
報告受付サイト活用と地域の薬薬連携で取り組む
副作用・副反応疑い報告
東海大学医学部付属病院
東海大学医学部付属病院は、病床数804床・年間入院患者数延べ28万人、年間外来患者数としては延べ65万人規模の特定機能病院です。PMDAが運営する医薬関係者からの副作用等報告(以下「医療機関報告」という。)の電子報告システムである「報告受付サイト」を利用した副作用・副反応疑い報告を行っているほか、地域との薬薬連携※1にも積極的に取り組んでいます。今回、PMDAは、医療機関報告の電子化推進と医療の安全対策に貢献している同院を特集し、同院の薬剤部で医療機関報告に携わる先生方と対談を行いました。医療機関報告業務について、「報告受付サイト」を活用した報告の電子化への取り組みや課題、メリットなどズバリ切り込んだ内容をお届けいたします。
※1薬薬連携 …病院の薬剤師と薬局の薬剤師が情報を共有し、安全な薬物療法を継続して提供する体制のこと
鈴木 優司 先生
東海大学
医学部付属病院
薬剤部 部長
1988年東京薬科大学薬学部薬学科卒業後、2年間の調剤薬局勤務を経て東海大学医学部付属病院 薬剤部入職、同付属八王子病院(医療安全管理者兼務)、同付属大磯病院(医薬品安全管理者兼務)を経て現職
川邉 康平 先生
東海大学
医学部付属病院
薬剤部DI室係長
2002年東邦大学大学院 医療薬学専攻 博士前期課程修了後、東海大学医学部付属病院 薬剤部入職。同付属大磯病院、同付属東京病院を経て現職
川ノ上 あゆみ 先生
東海大学
医学部付属病院
薬剤部DI室
2022年日本大学薬学部卒業後、東海大学医学部付属病院 薬剤部入職。
PMDA対談者|太田 美紀
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 安全性情報・企画管理部長
1997年東京大学薬学部卒業後、1999年同大学大学院修士課程を修了し、2000年に厚生労働省入省。環境省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、人事院等への出向を経て、厚生労働省医薬局医薬安全対策課にて医薬品、医療機器等の安全対策を担当。「高齢者の医薬品適正使用の指針」作成にも従事。2019年より同局総務課薬局・販売制度企画室長、2021年9月より同課薬事企画官として、薬局・薬剤師関連の施策に従事。2024年4月より現職。
(以下、敬称略)
太田:本日は医療機関報告における、東海大学医学部付属病院の具体的な取り組みや、PMDAが近年推進している電子報告についてのお話をお聞きしたいと思っております。貴院にてPMDAへの医療機関報告業務を担われているのは薬剤部のDI室と伺いました。
川ノ上:DI室では、医師、看護師、薬剤師などの院内スタッフのほか、周辺の薬局を含めて病院内外から上がってくる、全ての医薬品による副作用やワクチンによる副反応が疑われる事象(以下「有害事象」という。)に関する情報を一元管理しています。それらの情報について、DI室担当者が内容の確認や有害事象のグレード評価※2を行い、全て院内の医薬品安全管理委員会に情報を上げております。そのうち、グレード3以上の事象や添付文書に記載のない未知の事象などをPMDAへ報告しております。
※2 グレード評価:Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE:有害事象共通用語規準)における、有害事象の重症度評価
太田:医療機関報告を促進するための工夫や、病院内での意識啓発についてはいかがでしょうか。
鈴木:報告業務についての考え方としては、医師、看護師、薬剤師が、それぞれの専門領域からアプローチすることを基本としています。つまり、院内で発生した事象に最初に気づくのは医師や看護師ですので、まずは医師や看護師から薬剤師へ症例を共有してもらい、医薬品の専門家である薬剤師が報告書としての取り纏めを行っております。
川邉:当院では、医師や看護師が有害事象に気づいた場合、院内の電子カルテの機能を利用し、必要事項を入力して情報を上げることができる仕組みとなっています。情報提供先は、院内の医療安全に関わる「医薬品安全対策管理室」であり、そちらでの検証を経て、DI室に有害事象の情報として上げられます。
鈴木:有害事象の情報は、医療安全の括りとしてインシデントレポートなどと合わせて医薬品安全管理委員会へ情報を上げる仕組みが構築されております。
太田:「医療機関報告への気づきは医師や看護師から」というお話でしたが、現実的には「気づいたとしても、実際に薬剤師へ情報提供するまで至らない」というケースもあるのでしょうか。
鈴木:現実的には、医師や看護師は手が回らないこともあります。そのため、病棟担当の薬剤師に口頭で情報を伝えてもらい、病棟担当の薬剤師を経由してDI室へ情報が上げられるケースも多いです。
また、院外(外来患者)で発生した有害事象については、地域の薬剤師会の先生方のご協力も得て、有害事象ヒアリングシートなどを活用しながらDI室へ情報を上げていただいております。有害事象は軽症のうちに発見し、早期に対応することが重要なので、地域の薬局薬剤師の先生方からの情報も重要だと考えております。
副作用・副反応疑い等の報告は、合併症報告としてインシデントと同様に報告すると説明する鈴木先生
川邉:当院では、薬剤部内で「教育研修・地域連携係」の担当者を割り振っており、地域との薬薬連携に積極的に取り組んでおります。具体例としては、当院で作成した有害事象のヒアリングシートを用いて、薬局薬剤師の先生から特に経過に注意が必要な患者さんに対してヒアリングをしてもらい、有害事象を疑う情報が得られた場合に当院のDI室へ情報を共有してもらっています。
院内で使用している報告様式。院内スタッフが有害事象に気付いた際に第一報として報告している。
川邉:院内の薬剤師からDI室への情報提供と、それ以外の職種からの情報提供とで、提供の形式やプロセスが異なります。まず、薬剤師からの情報提供については、事象のグレード評価や発現日、転帰日等も含めた提供様式としています。一方、薬剤師以外の院内スタッフからの情報提供については、患者情報を除いた項目は投与日、事象とその対応のみを記載する簡便な提供様式とすることで、情報を上げやすい体制を目指しています。
太田:病院全体として医療安全の意識付けがあるうえで、最低限の情報で報告していただくことで、薬剤師以外の職種からも積極的な情報提供が促されるわけですね。医療安全の取り組みの一環として有害事象の情報収集を取り扱うのは画期的と感じます。
院内の各職種にとって最適な手段でDI室に報告できる体制を構築。DI室で情報を一元的に集約・管理し、PMDAへの報告を実施
ワクチンの副反応疑い報告について語る川邉先生
太田:ワクチンの予防接種による副反応疑い報告についての取組み状況はいかがでしょうか。
鈴木:ワクチンの副反応疑い報告の取り扱いが増えたのは、やはり新型コロナウイルスに関するものが中心ですね。
川邉:副反応疑い報告に特化した院内研修等は実施しておりませんが、医薬品による副作用報告までのルートがもともと確立されていたので、ワクチンの副反応疑い報告に関しても、スムーズな報告体制につながっているのだと思います。
太田:医薬品の場合と同じく、ワクチンによる有害事象が見られた場合には、医師、看護師から第一報を上げてもらい、DI室で詳細を調べるという流れでしょうか。
川邉:そうですね。新型コロナが流行した際、院内スタッフの集団接種が行われ、発生した事象について多くの報告があったと当時の担当者から聞いています。当時は世の中の風潮として、心筋炎などの様々な有害事象が話題になっていたので、医師たちも注意深く観察し、積極的にDI室へ情報共有を行う機運が高まったのだと思います。
鈴木:ワクチンによる有害事象について、われわれ現役の医療従事者はすでによく認知していると思います。今後必要なのは、これから医師や薬剤師を志す方への教育強化ではないでしょうか。大学の講義や実務実習を通じて、医療機関報告の制度※3,4に関する教育機会がもっと大学における教育内容に組み込まれていくようになれば良いのではないかと思います。
※3 医薬品・医療機器等安全性情報報告制度 : 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の第68条の10第2項に基づき、医薬関係者が医薬品等の副作用によるものと疑われる疾病等を知った場合に、厚生労働大臣に報告することを義務付ける制度
※4 予防接種後副反応疑い報告 :予防接種法第12条第1項の規定に基づき、医師等が定期又は臨時の予防接種を受けた者が一定の症状を呈していることを知った場合に、厚生労働大臣に報告することを義務付ける制度
報告受付サイト」を利用するパソコン端末(外部インターネット接続端末)は、電子カルテ端末と明確に区別するためにラベルで明示
太田:医療機関報告に関する電子化のメリットは、どのような点にあるとお考えでしょうか?
川ノ上:報告受付サイトを利用する前は、有害事象に関する情報について、1件ずつ一から報告書を作成するのに大変時間を要していました。報告受付サイトでは、過去に提出した報告書を検索できるので、該当する症例に関する報告書の絞り込みや過去の報告書の流用が可能になり、作業時間の短縮に役立っています。1件あたりの作成時間が短縮されることで、対応可能な件数が増えました。
太田:データ化した報告事例の活用方法などに関する現在の取組みや、今後の展望をお聞かせください。
川邉:冒頭で川ノ上がご説明したように、現在はグレード3以上の事象や未知の事象のみ、PMDAへ報告しています。ただ、グレード2以下の事象も1ヶ月ごとにリスト化して、院内の医薬品安全管理委員会への情報共有と院内端末上の掲示板での周知を行っており、有害事象の早期発見に繋げたいという狙いがあります。
川ノ上:ただ比較的軽度の有害事象の場合、院外で発見されやすい側面があります。そのため、今後も地域との薬薬連携を強化していき、より安全に医薬品等が使われるように、より安全な薬物治療の実現に向けて活動していきたいと考えております。
太田:最後に、医療機関報告の制度や報告受付サイトの機能面などについて、行政やPMDAへのご要望やご意見があればお聞かせください。
川邉:もともと院内で取り纏めているデータ(例えば、Excelに入力されたデータ)を報告受付サイトへ取り込めるようになると、報告受付サイトへのデータ移管や管理が簡便になり、報告のハードルが下がると思います。
鈴木:報告を上げる側の意識づけという点で、行政やPMDAからのフィードバックが大切だと思います。例えば、「医療機関報告から添付文書の改訂につながった」というようなフィードバックがあると、病院や薬局において、『自分たちの仕事が医療安全に繋がっている』という意識が非常に高まり、医療機関報告は活性化していくと思います。社会に貢献しているという実感が、薬剤師として、医療人として、何よりのモチベーションになります。
太田:貴重なご意見だと思います。医療機関報告は医薬品等の安全対策のために、非常に有用な知見となっております。今後どういう形でフィードバックできるか、PMDAとしても考えて参ります。本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
神奈川県伊勢原市にて、1975年に開設。さまざまな医療専門職の教育・研修の場であると共に、病床数804床の特定機能病院としてさまざまな高度医療を開発し提供しています。高度救命救急センターおよび総合周産期母子医療センターを有し、神奈川県湘南~県西地域において、急性期医療における中核的医療機関としての役割を担っています。さらに地域がん診療連携拠点病院として、地域に専門的な診療を提供しています。
所在地:〒259-1193
神奈川県伊勢原市下糟屋143
ホームページ:https://www.fuzoku-hosp.tokai.ac.jp/